「スイスアーミー」という制度 -徴兵制、スイスの場合
日本には2012年時点で、徴兵制度はありません。
18歳になっても、20歳になっても、兵隊になる経験をすることは基本的にありません。
これは世界的に見てあたりまえなのかどうかーちょっと興味あったので調べてみました。
あとは、「徴兵制」=戦争、昔のもの、・・・というイメージがある気がするので、他の国の事情なんかも。
-徴兵とは憲法や法律で一定の年齢に達した国民に兵役の義務を課すこと。
-現在では軍隊またはこれに類する組織を保有する約170か国のうち約67か国が徴兵制度を採用している。
-スイスの男性市民は、18歳時に兵役を務められる能力があるかどうかを調べる身体検査が義務付けられている。
コメント欄のアメリカ人のコメントが興味深い。
教官-Warum Sie nicht folgen Sie meinem Befehl?(なぜすぐに命令に従わなかった!?)
私は「スイスアーミー」の意味は2つあると思います。
1つめは、「スイスアーミー」というのが、実際には【国防兵育成の場】というよりも、
実際の銃も持たしてもらった
-実弾は入ってませんよ。もちろん。
18歳になっても、20歳になっても、兵隊になる経験をすることは基本的にありません。
これは世界的に見てあたりまえなのかどうかーちょっと興味あったので調べてみました。
あとは、「徴兵制」=戦争、昔のもの、・・・というイメージがある気がするので、他の国の事情なんかも。
-徴兵とは憲法や法律で一定の年齢に達した国民に兵役の義務を課すこと。
-現在では軍隊またはこれに類する組織を保有する約170か国のうち約67か国が徴兵制度を採用している。
(青色) 志願制の国家。
(オレンジ色) 3年以内に徴兵制を廃止予定の国家。
(赤色) 徴兵制を施行している国家。
(灰色) 不明。
=Wikipediaより
つまり、徴兵制度はアジア・ヨーロッパ・アメリカ・アフリカの多くの国で顕在だということがわかる。
例えばアジアでは、ご存じ「韓国」に加えて「台湾」「中国」「マレーシア」「タイ」「カンボジア」「シンガポール」「ベトナム」など
ヨーロッパでは永世中立国の「スイス」に続いて「フィンランド」「ノルウェー」などの北欧諸国そして「トルコ」「ギリシャ」。
アフリカだと「エジプト」もだし、「アルジェリア」「セネガル」「コートジボワール」なんかも。
中東だと女性も徴兵される「イスラエル」の他に「クウェート」「シリア」「イラン」など。
こういった国を多いと感じるかは人それぞれですが、日本人にとって、平和の象徴のような「スイス」に徴兵制があるのは
不思議ではありませんか?
私は最初聞いた時けっこう衝撃を受けました。
ここから少しだけ、「スイスの徴兵制度」について綴りたいと思います。
まず一般的な説明。そしてそのあと私のスイス人の友達から得た情報を交えて。
-スイスの男性市民は、18歳時に兵役を務められる能力があるかどうかを調べる身体検査が義務付けられている。
そこで不合格と診断されると兵役免除となるが、合格者は20歳に15週間の初任訓練を受けて個人装備一式が支給される。36歳まで数年毎に年に十数日間の補充講習を受け、20歳から数えて通算で合計260日間の兵役に就かなければならない。過去徴兵制を廃止するために国民投票を2度発議したが、否決された。
1991年の国民投票で良心的兵役拒否が認められるようになり、介護や医療などの代替役務(Zivildienst)が制度化された。 =Wikipediaより
<Wikipedia不十分なので補足>
男性は18歳になったら身体検査を受けて、合格で、なおかつ宗教上の理由やその他で志望しない場合を除き(※)
初年度(20歳となっているが多少の延長はできる模様)に約4~5カ月の訓練を受ける。
その際、国から兵士としての装備一式が貸与される(制服・銃・防弾ジャケット・スイスナイフなど)
これは6-7年後の徴兵が終了するまで自己管理。
初年度の訓練の内容:銃の取扱い、化学兵器の取り扱い・悪天候下での軍隊としての隊列の組み方etc
その後、毎年約3週間ずつ6年間ほどの訓練という名の研修に参加。
内容:1週間程の基本的な射撃、隊列を組む訓練など以外は配属によって変わる。
企業は従業員に対し必ずこの期間休暇をださなければいけない。
基本的には1年に3週間政府から通知が来た時期に行うが、学業や海外赴任など事情は様々なので時期の変更は可能。
このシステム自体が「国に何かあった時に使える兵士を一定数持つ」ことであるため、初年度は「基礎訓練」それからは「基礎訓練を忘れないための研修」みたいな感じ。
※徴兵の義務を果たさなければ生涯に渡って徴兵を成した人に比べて高額の税金が徴収される。
身体検査に不合格でも代替任務としての例えば街の交通整理、警備、病院での奉仕などを行えば減免もしくは免除。
身体検査に合格でも徴兵を宗教上の理由などで拒否すると税金支払いの義務が発生。
ここまでが、真面目な説明。
まずはOfficialな動画。色んな訓練があります。コメント欄のアメリカ人のコメントが興味深い。
<実情>ここからが本当のスイスアーミー!
【1】"スイス語なんて言葉はない”-イエス!サー!でも上官が言った命令の意味がわかりません!!
スイスはドイツ語(60%)・フランス語(30%)・イタリア語(10%)ロマンシュ語(ほんのわずか)の4カ国語が併存する国。
実際にロマンシュ語を話す人はドイツ語も話すので3カ国語といっていいかもしれませんが。
そこで徴兵制。スイス各地から20・21才の男性が無作為にスイス各地の基地などで訓練を受けます。
‐「Bonjour!」「Guten Tag!」「Ciao!」
当然、通じない。もちろんそこはスイスなので絶対2,3カ国語話せる人がチームに何人かいるんだけれども。
教官とのやりとりこんな感じ
教官-Gehe hin und zurück hier sofort!!
兵士A-イエス!サー! ・・・で、今教官なんて?
兵士B(例えばフランス語とドイツ語両方できる兵士)
-だから、あそこまで走って行って、ここまでダッシュで戻ってこいって。
兵士A-あ、わかった~
教官-Warum Sie nicht folgen Sie meinem Befehl?(なぜすぐに命令に従わなかった!?)
兵士A-ドイツ語が難しすぎてわからなかったので。
みたいなw(ドイツ語わからないんで上記は適当;;)
【2】”週末なので帰ります”-金曜日、駅はスイスアーミーで混雑します。
初年度の5カ月の訓練中であっても、翌年からの3週間の訓練で会っても週末は家に帰れます。
特に訓練地が近ければ、毎週電車で帰ることができます。
もう、迷彩柄の服着た人駅にごろごろいます。
しかも近所のお兄ちゃんだったりします。身近!
【3】“DRINKIN ARMIY”スイスアーミー=酔っ払い集団!?
20歳の若者が、1か所に集まってやることと言えば、、。
言葉も違い、普段は「ドイツパートは頭硬いし嫌いやわ!」「イタリアパートこそ適当すぎる!」とか言ってるスイス人も
5か月も寝食を共にし、言葉の面でも生活の面でも助け合って苦しい訓練を超えてくると絆が生まれます。
【2】である通り週末帰宅することもできますが、家が遠い場合なんかは訓練場所の近くに週末いるわけなので、
ずーーーーーーーーーーーーーーっと飲んだり騒いだり踊ったり、女の子誘って断られてやっぱり飲んだり。
行ったことのない土地に行けるんだから、土日は観光に出かけたりもするよね、そら。
【4】“Parents day”-今日ウチの子の晴れ舞台なんです^^ あれ!あの凛々しいのウチの息子です!
軍が開催する家族のための訓練地開放日。
参観日もしくは発表会みたいなもんですw
背景のスイスアルプスとあいまって、なんとのどかな光景かとほほえましくなります。
<まとめ・考察>
スイスは永世中立国です。
つまり、他国同士の戦争には干渉しない。そして自国も他国へ攻め入らない。
国連の決議があっても、自国でない紛争地にスイスアーミーが赴くことはありません。
唯一、他国がスイスの領土を侵して攻め入ってきたときのみ、職業軍人及び、徴兵制の義務期間にある20-35才の男子が国防に駆り出されるのです。
ただ、ヨーロッパ各国がスイスへ攻め入ることは100%ありません。
そこ(スイスの各銀行)にヨーロッパ財政の大部分を占める資産が眠っているからです。
そういう意味では、奨学金を借りるために予備兵登録していたらいきなり大統領閣下の命令で「イラクへ行って世界平和のためにムスリムを殺せ」といわれるような某国とは違います。
徴兵は確かに厳しい訓練があるが、実際に訓練以外で徴兵されるのは、あくまでも「自国民を、自分の家族を守るため、にスイスの国内で戦う」時のみ。
目的と範囲がはっきりしているため、徴兵に未だちゃんと応じる人の方が多いのかもしれません。
徴兵は確かに厳しい訓練があるが、実際に訓練以外で徴兵されるのは、あくまでも「自国民を、自分の家族を守るため、にスイスの国内で戦う」時のみ。
目的と範囲がはっきりしているため、徴兵に未だちゃんと応じる人の方が多いのかもしれません。
私の4人の男友達でいうと、1.合格し、徴兵へ(フランス語パート)2.合格し徴兵へ(ドイツ語パート)
3.合格したが、宗教上の理由とのことで拒否(本当は時間を無駄にするより、その間勉強したいとのこと)(フランス語パート)4、身体検査NGだったが、市街パトロールなどで義務を果たしている(フランス語パート)
私は「スイスアーミー」の意味は2つあると思います。
1つめは、「スイスアーミー」というのが、実際には【国防兵育成の場】というよりも、
スイス国内での各パートへの相互理解を深め、【スイス人同士の共通認識を確認する場】になっているということ。
言葉だけでなく、TVも、政治的風潮も、食事も違うので、普段は日本でいうところの‘関東/関西’以上に‘ドイツパート/フランスパート/イタリアパート’と住む場所でささいなことで論争しあっているスイス人たち。
違うパートに住む人は違う国の人くらいの感覚の人もいるのですが、人生の中で20歳~21歳というまだ世の中に対するモノの考え方が凝り固まっていない時期に、
5カ月という時間を、寝食を共にし、相手に命を預けて訓練する。
私たちが、「小学校の時の運動会の徒競争でさー。」とか話して、「あーあったあった」となるのは
日本の運動会というイベントを開催する小学校という教育機関で教育を受けたからなので、
同じ経験を持つということでそこには一種の「仲間意識」が芽生えるものです。
どんなに馬鹿げた訓練でも一緒の体験として持っておくことは結束を固めます。
スイスでは「スイスアーミーでさー、あの訓練がさー」というのは20代以降男子の共通の話題です。
そりゃ違うとこもあるけど、案外他のパートの奴らとちゃんと話してみると、言葉は違ってもみんな同じ教育、同じ制度の中で、同じ義務を背負う【スイス人】である。
周辺を取り囲む欧州諸国やアメリカ、ロシアに何を言われても我々のアイデンティティを守るために何かあれば共に戦わなきゃな。
そんな意識が芽生えていると感じます。
そういった【スイス人としての国民意識】を確認することにこそ、この「スイスアーミー」という制度は役に立っていると感じるのです。
2つめは(別に狙った意図ではないとしても)移民の流入の抑制。
スイスは生活水準も教育水準も高く(税金も高いが)治安も良いし、自然豊かで人気の国です。
しかし、国土は九州くらいの大きさだし、人口は700万人(cf日本の首都圏だけでも3000万人以上)しかない。
多くの国際機関の本部があることで知られるように国際色豊かな国で、既に国民の中の外国人の比率は30%程だったと記憶しています。
ただ、最早これ以上急速に外国人(スイス人で教育を受けた機会がなく、成人してから帰化する人々)の流入が進めは、国としての骨格の維持が難しくなると最近議論になっています。
もちろん国としては無下に外国人の帰化申請を拒否することはできないので、難しい問題ではあるのですが、
高い税金が、スイスへ移り住み、国籍取得したい富豪には何の意味も持たない中で、
「スイスアーミー」という制度はひとつのストッパーになっているのでは、と考えます。
徴兵は今日明日で終わるものではないし、自分が義務を果たせば終わるものではない。
自分の子供、孫、子孫代々これからこの国の「兵士」となると考えなければいけないので。
あ、あくまでこれは私の推測ですが。
ということで、長くなってしまいましたが、「スイスアーミー」というシステムについてのPost終了。
少しでもスイスという国の理解の助けになれば幸いです。
*おまけ*
スイスアーミーの制服着た私。
違うパートに住む人は違う国の人くらいの感覚の人もいるのですが、人生の中で20歳~21歳というまだ世の中に対するモノの考え方が凝り固まっていない時期に、
5カ月という時間を、寝食を共にし、相手に命を預けて訓練する。
私たちが、「小学校の時の運動会の徒競争でさー。」とか話して、「あーあったあった」となるのは
日本の運動会というイベントを開催する小学校という教育機関で教育を受けたからなので、
同じ経験を持つということでそこには一種の「仲間意識」が芽生えるものです。
どんなに馬鹿げた訓練でも一緒の体験として持っておくことは結束を固めます。
スイスでは「スイスアーミーでさー、あの訓練がさー」というのは20代以降男子の共通の話題です。
そりゃ違うとこもあるけど、案外他のパートの奴らとちゃんと話してみると、言葉は違ってもみんな同じ教育、同じ制度の中で、同じ義務を背負う【スイス人】である。
周辺を取り囲む欧州諸国やアメリカ、ロシアに何を言われても我々のアイデンティティを守るために何かあれば共に戦わなきゃな。
そんな意識が芽生えていると感じます。
そういった【スイス人としての国民意識】を確認することにこそ、この「スイスアーミー」という制度は役に立っていると感じるのです。
2つめは(別に狙った意図ではないとしても)移民の流入の抑制。
スイスは生活水準も教育水準も高く(税金も高いが)治安も良いし、自然豊かで人気の国です。
しかし、国土は九州くらいの大きさだし、人口は700万人(cf日本の首都圏だけでも3000万人以上)しかない。
多くの国際機関の本部があることで知られるように国際色豊かな国で、既に国民の中の外国人の比率は30%程だったと記憶しています。
ただ、最早これ以上急速に外国人(スイス人で教育を受けた機会がなく、成人してから帰化する人々)の流入が進めは、国としての骨格の維持が難しくなると最近議論になっています。
もちろん国としては無下に外国人の帰化申請を拒否することはできないので、難しい問題ではあるのですが、
高い税金が、スイスへ移り住み、国籍取得したい富豪には何の意味も持たない中で、
「スイスアーミー」という制度はひとつのストッパーになっているのでは、と考えます。
徴兵は今日明日で終わるものではないし、自分が義務を果たせば終わるものではない。
自分の子供、孫、子孫代々これからこの国の「兵士」となると考えなければいけないので。
あ、あくまでこれは私の推測ですが。
ということで、長くなってしまいましたが、「スイスアーミー」というシステムについてのPost終了。
少しでもスイスという国の理解の助けになれば幸いです。
*おまけ*
実際の銃も持たしてもらった
-実弾は入ってませんよ。もちろん。
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